そしていつもの放課後

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「あら、津川さん。今から?」  放課後、生徒会室に向かう奈津実にいつものおやつであろう紙袋をぶら下げた平野が声をかける。 「私もオカルト同好会の二人に会いに生徒会室へ行くところなの」  あの二人に会うために生徒会室に出向くという事態に全く納得がいかない奈津実。  額に不本意の三文字を浮かび上がらせ笑顔で応える。 「……待っていればその内現れると思います」 「今回は丸く収まって本当に助かったわ。治療費は払ってもらえることになったし、引っ越しの件も紀藤君のお父様が会社のトラックを無償で貸してくれることになってね」 「そうなんですね。良かったです」 「みんな手伝いに来てくれるって聞いてるけど津川さんもでしょ。ありがとう」 「乗り掛かった舟ですから」  奈津実と平野は微笑み合う。 「それにしても市堰君は不思議な子ね。あんなに頑なだった四津谷君の心をあっという間に開いてくれて」 「単に趣味が合っただけじゃないですか?」  ぶっきらぼうに言う奈津実に平野は何かを思い出して頷く。 「大谷君てね、入学したばかりの頃はいつも難しい顔をしててね、話しかけても関係ないです、ほっといてください、って感じだったの。でも市堰君と一緒にいるようになってから元気が出たっていうか、楽しそうになって安心したのよ」
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