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だから趣味が合っただけだろう、と奈津実は苦笑いを浮かべる。
しかし朔也の難しい顔を想像してちょっと可笑しくもなり、それはどうしてだろうとも思った。
「津川さんも完璧すぎて少し周囲から浮いていたけど、市堰君たちとは仲良くしてるみたいだから安心したわ」
「決して仲良くはないです!」
そうこうしている内に生徒会室に着き、奈津実が扉を開けると甘酸っぱい香りが漂って来た。
「どら焼きじゃん! 朔也がパウンドケーキだっていうからアップルティーにしたのにぃ!」
目敏く平野が持っている紙袋をチェックし、頬を膨らませポカポカと朔也の腕を叩く江。
いてぇから! と江のグーになった手を跳ね除ける朔也。
そんな二人が座る応接セットのテーブルには今か今かとおやつを待ちわびて、紅茶と小皿が用意されていた。
「誰もいないのに勝手に入らないでちょうだい! そして紅茶を淹れないでちょうだい!」
怒鳴る奈津実の横を通り抜けて平野がソファーに座る。
「あら、そうなのよ。すごく美味しいパウンドケーキのお店があってね、是非食べてもらおうと思ったんだけど臨時休業だったの。でもここのどら焼きも美味しいのよ」
すっかり二人に馴染んだ平野。
「津川さんもお座りなさい」
デジャヴを感じながら奈津実は腰を下ろす。
平野は江、朔也、奈津実と目線を合わせ微笑んだ。
「みんな本当にありがとうね。それから、四津谷君の引っ越しが今度の日曜日に決まったの。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる平野に奈津実はいえいえ、と手を振る。
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