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「そんな改まって。そういえばアパートも都合よく見つかったみたいですけど、それも紀藤君のお父様の口添えですか?」
奈津実の問いに江が口いっぱいに頬張ったどら焼きを吹き飛ばしながら答える。
「ボクのアパートだよ!」
「汚い!」
「会長が追い出してくんないから、最後の手段で朔也に出張ってもらったの!」
「はぁ?」
「幽霊呼んでもらっちゃった!」
何ですって!? と奈津実は声を荒げる。
「いくら迷惑な住人だからってそんなことしていい道理はないでしょ!」
「だって家賃全然払ってくれないんだもん!」
「はぁ!?」
仕方がないと言わんばかりに鼻で息を吐き朔也が説明する。
「江が大家なんだよ。去年じいさんが亡くなった時に江にやるって遺言状に書いてあったんだと」
何だかちょっと負けたような気分になり、奈津実は矛先を朔也に向ける。
「だ、だからって、大体そんな霊感強くないんじゃなかったの!?」
黙ってどら焼きをかじる朔也。
江はアップルティーを飲んでウインクする。
「見える人と、分かる人は同じじゃなくてもいいんだよ。通訳がいれば幽霊や宇宙人とだって話は出来るんだもん! 山田のおばあちゃんいい人だったよ!」
「山田のおばあちゃんて誰よ!」
「ニャンコたちをピカッとさせてた人!」
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