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その話に平野はハッとした。
「もしかして二十年くらい前に猫を庇って亡くなった三丁目のタバコ屋の山田さん?」
「そうそう! あそこで事故が続いたから危ないよって教えるためにニャンコを集めてピカピカさせてたんだって」
朔也はどら焼きをゴクリとのみ込み付け加える。
「その猫も全部霊だったから誰も猫を見つけられなかったんだ」
平野は目を閉じて懐かしむように何度も頷いた。
「なるほどね。山田さんはあの公園に棲みついていた野良猫の世話をしていたのよ。お亡くなりになってからは保健所が来てほとんどの猫を連れて行ってしまって」
バカバカしい! と奈津実が怒鳴りたいのを我慢していると平野の携帯が鳴った。
「あら、職員会議があるのを忘れていたわ」
そう言って忙しなく生徒会室を出て行く平野と入れ違いで生徒会役員がやって来た。
奈津実はソファでくつろぐ江と朔也を睨みつけて言う。
「生徒会も会議があるんですけど」
二個目のどら焼きをハムスターの如く頬張り江は答える。
「ふぉふぁわいわふ!」
朔也はいつになく二枚目に構え親切に訳す。
「お構いなく、だって」
「アンタたちが構わなくても、こっちが構うのよ……」
優雅にティーカップを構えご満悦に微笑む江。
握りしめた拳をフルフルさせながら口角を上げる奈津実。
この後のいつもの展開を察してどら焼きをポケットにしまう朔也。
「とっとと出てってちょうだい!!」
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