いつもの放課後

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 ハイハイ! と上げた手を口元でグーに揃えるいつものポーズで、江はニコニコと無邪気に喋り出す。 「先生のクラスの四津谷薫クンだよね! 透き通る白い肌、ブラウンの髪と瞳! 身長167センチ、体重49キロ、視力 右1.5 左1.2、足のサイズ25センチ、指輪のサイズ」 「そこまでの情報いらねぇよ!」  朔也に遮られても江は楽しげに続ける。 「あんまり目立たないんだけど中々の美形なんだよね! ボクの目はごまかせないぞ!」  誰もごまかそうとかしてないから! そう突っ込んで朔也は平野に問う。 「オレ、四津谷が担架で運ばれてくとこ出くわしたんだよな。骨折れちゃってましたよね?」 「そうなの。右足にヒビが入って、右腕は骨折したのよ。なのに入院費が払えないからってすぐ退院してしまって」  奈津実が訝し気に眉間に皺を寄せ身を乗り出す。 「治療費は紀藤君側で支払ってくれるんじゃないんですか? 紀藤君が突き落としたって目撃証言もあったし、本人も認めたって聞いてますけど」 「えぇ。でも紀藤君のお父様が息子がそんなことをするはずがないと譲らなくて。それに紀藤君がやったって証言していた生徒が見間違いだった、四津谷君が自分で転んで落ちたんだって言い出してね」  朔也は欧米人のような身振りで信じられない! とアピールし、背もたれにドカッと身を投げ出した。 「うっわ、それドラマでよくあるやつじゃん。金と権力のある親を持つ子供は何したって許されるパターン」
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