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僕とヒツジは、カウンターの奥のテレビに映るスペインのサッカーの試合を眺めながら生ぬるいビールを飲んでいた。
「やれやれ」とヒツジはつぶやくように言った。
「どうかしたのか?」と僕は訊く。
「馬鹿馬鹿しいなと思ってさ。今の大学生活も卒業後のことも。ついでに言うといままでのしょうもない人生を振り返っている俺自身がさ」
「誰だってそんなものじゃないか。不満のまったくない生活なんてありえない」
「そうかい?」といくばくかの驚きを顔に出しながら、ヒツジは言った。
「思春期が終わっただけで、まだまだ僕らは尻が青い子供も同然さ」と僕は言った。
ヒツジは何も言わずにテレビの画面をじっとにらみつけていた。反論の言葉をここではないどこかに探し出そうとしているようだった。
「やれやれ、あんたの言う通りかもしれない。でもあるいはケツの青いガキのほうがいいのかもしれない。現実を達観した老人よりはね」
「どちらとも言えない。隣の芝生は青く見える」
「はっきりしないな」とヒツジは言った。「まあ老人は老人らしく。子供は子供らしく。夢を見ちゃいけないとは誰も言ってないしな」
「その通りだ」と言って、僕は軽くうなずいた。
「なあ、あんたの夢ってなんだ?」とヒツジは視線をこちらに向けて言った。
僕は少し考えこむ。無言の間が我々の周りを刹那、支配する。
「夢なんて、ないさ」僕はポツリと言った。
その言葉は、まるで自分から出たものとは思えないような違和感を生み出したが、その意味するところはまさしく真実だった。
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