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第3章
季節は蒸し暑い8月の頭だった。僕は大学の前期の試験がすべて終わった翌日の朝、帰郷する準備をしていた。
とはいっても、粗方の準備は昨日の夜に済ませていたので、ボストンバッグの中身をもう一度確認するくらいのものだ。
支度を終わらせると、戸締りを確認しガスと水道の元栓を締め、部屋を出る。
10分ほど歩いて、最寄り駅で電車に乗り、車内の涼しさにため息をもらす。
僕は席に座って、イヤホンから流れるドアーズを聞きながら、文庫本を読んだり、それにも飽きると都市と田畑を交互に映す車窓を眺めながら、たわいもない思考を連鎖させていた。
僕は大学生になって何を得たのだろうとか。帰っても特にすることなんてないじゃないかとか。後はずっと昔のことを思い出していた。
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