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第一章 融解
ドールと言う名の少女は14歳になっていた
両親は彼女が8歳の時に離婚し、「父の脅威」は過去の出来事になっていた。
しかしドールの心の傷は深く、また「父への忠誠」も絶対だった。
「早く死ななきゃ、パパに喜んでもらわなきゃ」
5歳で煙草を吸い始めたのも、薬を大量に飲むのも、手首を幾度と傷付けるのも・・・
ドールの心の中にある「生きる事への罪悪感」からだった。
「パパの為に出来る事、全部やりたい!」
毎日が「生」との戦いだった。
そしてついに、願いは叶えられようとする・・。
「白血病」の発症。
ドールは涙を流して喜んだ。
「これで、パパは笑ってくれる・・・」
だが・・・彼女はその後泣いて後悔する。
同じ病棟で、「生涯の仲間」に出逢ってから・・・
ドールは、あるバンドの熱狂的ファンだった。
激しいドラム音、引き裂かれそうなギター、神の歌声・・・。
全てに対して閉ざしていた「心」に、それらは進入し、瞬く間に広がった。
その音を聴いている間だけは、ドールは「人間の温もり」を取り戻していた。
そう・・・「その日」も・・・いつもと同じ様に、彼女のヘッドホンからは「神の音楽」が流れていた。
病棟の屋上の手すりにもたれ、目を閉じて旋律に全てを任せていた。
「・・・・?・・・!!」
ドールは突然止んだ音に驚き、目を開けてまた驚いた。
3人の少女と1人の少年。
「ねぇ、あんたもこのバンド好きなの?」
ドールのヘッドホンを取り上げ、一人の少女が言った。
「私達もね、すっごい好きなんだぁ!」
「俺さ、このバンドの限定版デモテープ持ってんだけど、聴かない?」
「ねぇねぇ、メンバーで誰が一番好き?一番好きな曲は??」
ドールは答えない。
(何なのよ・・・こいつらは・・・)
つちかわれた警戒心と、彼女に唯一許された感情「嫌悪」が噴出した。
4人の顔を睨みつけ、ドールは微動だにしない。
そんなドールにおかまいなしで、目前の少女達は勝手に話を進めていく。
「ねぇ、楽器出来ない?」
「あ、俺、ギター出来る!このバンドの曲なら全部完コピ出来るぜ!」
「私もギター!!任せて!!」
「これでも私、声楽やってんのよね。じゃ、ヴォーカルもらいっ!」
「あの・・・私、ベースやりたいなって思ってたの。いい?」
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