~第二章~ 親愛

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~第二章~ 親愛

ライヴハウスの楽屋。そこが「ALIVE」の溜まり場になった。 相変わらずの「暴走特急」のヨシノ。 その特急の運転手、ルギ。 素直で大人しそうに見えるが、一番頑固で誰も逆らえない「女帝」、最年少のミオリ。 唯一の男で、遠慮と我慢と「秘密を守る」事を知らない、「人の迷惑 蜜の味」なホムラ。 そして・・・・無表情、無愛想、無関心のドール。 子犬の様にじゃれあう4人を、ドールはただ見ているだけ。 だが・・・少しだけ・・・少しだけ笑っている。 本人も気付かない位の「微笑み」。 それを見つける度に、彼女達の距離は少しづつ近づいていった・・・。 ささいな言い争い、食べ物の奪い合い・・・・。 今までの人生で経験した事のない「他人との接触」。 ドールはそれを、「楽しい」と思い始めていた。 それぞれの病気も、「目的」と「楽しみ」が出来たせいか、回復に向かっている。 練習を重ね、ライヴをこなす。ファンも着いてきた。 そんな中、ドールはライヴネームを「紫野舞」に変える。 彼女が愛してやまない、ギタリストの「H」。 彼と初めて出逢った時・・・・ 一面、紫の照明の中、寡黙にただギターを弾いていた。 ガラス細工の様に繊細な「神の音」。また時としてそれは地獄の爆音にも変わる。 「紫の野に舞う神の旋律」。 ドールは彼への尊敬と、無限の愛を込めて自分にこの名をつけた。 もうひとつ・・・・ライヴで「ドール!」と呼ばれるのが辛かった、というのもあるが・・・・ ヨシノ、ルギ、ミオリ、ホムラ、シノブ。 彼らは5人でひとつになっていた。喜びも哀しみも、全て分かち合っていた。 ALIVEの、何度目のライヴだっただろう・・・・ ドラムを叩く「シノブ」を、瞬きもせず見つめる一人の少年。 栗色の長い髪、大きな素直な瞳。華奢な肩。すらりとして、背の高い・・・ 彼の名は「早乙女 恋」。 その後ドールと出逢い、彼女の人生を大きく変えていく。 「人形」を「人間」に戻し、全ての「感情」と「愛」を与え・・・・ そして・・・・ 「シノさん」と「レン」が 初めて言葉を交わす・・・・ その瞬間まで、あと1時間・・・・
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