応報

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「おい! もう寒いからそこを閉めてくれ」 一階からそんな声が聞こえると、ばあさんは「はいはい」と言って窓を閉める。 声の主は、ばあさんの旦那だ。 頑固そうで口うるさいじいさん。 いつもばあさんをこき使っているような会話が、俺の部屋にも聞こえてくる。 その口調は、まるであの上司のように威圧的に感じた。 ある時、ベランダに腰かけてタバコを吸っていると、アパートの角から何処かに出かけていくばあさんとじいさんが見えた。 ばあさんは足が悪くて歩くのが遅いというのに、じいさんはお構いなしに先を歩いて行ってしまった。 思いやりのない奴だと、俺は思った。 そして、ばあさんがいない間に餌を食べに来た猫に水を掛けたり、カラスには石を投げたりして追い払っていたこともあった。 猫はじいさんに怯え、カラスはじいさんを嫌っていた。 餌を用意していたばあさんは、猫がいないことに気づくとガッカリしていた。 それでもじいさんには文句を言わず、「ごめんね」と呟いて部屋に入っていった。
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