応報

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俺がじいさんを突き飛ばしたのか? 手に触れた感触はじいさんの背中だったような気もするが、よく覚えていない。 その時、カラスの鳴き声が聞こえた。 石段の手すりに一羽のカラスが止まり、こっちを見て鳴いていた。 「なんだよ。お前だって、あのじいさんに石を投げられていたじゃないか」 俺はずっとしてやりたかった仕返しをしたんだ。 ただ、それがあいつではなかっただけのこと。 じいさんだって、少し痛い目にあえばいいんだ。 それでもカラスは、俺の顔を見ながら何度も鳴いた。 その喧しさで事態を飲みこみ、バレたら困るとその場から逃げ出した。 だが、俺の中でじいさんがいなくなれば、あのばあさんはもっと幸せに暮らせるようになるはずという思いもあった。 俺があいつから離れたように。 部屋に戻るなり、びしょ濡れのまま俺は布団に倒れ込み、そのまま眠りについた。 夢現の中で、遠くから救急車のサイレンが聞こえた気がしたが、俺は起き上がることができなかった。 ただ、夜になって一階から電話の鳴る音と、忙しなく出て行く足音を聞くと、そうだったんだろう。
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