応報

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それから半月ほど経った。 あれほど不快で忌々しい幻聴がなくなった。 一階から聞こえるじいさんの声が消えたのが、原因かもしれない。 じいさんは入院しているのか、ばあさんもあまり姿を見せない。 どうやら、俺のことはまだバレていないようだ。 喧しいアパートは、相変わらず隣の部屋から下手糞なピアノのメロディが流れて来る。 アパートの前の道を、何台もの車が通り過ぎていった。 ピアノの音が消えた頃、猫の鳴き声がした。 いつものことだ。 下のばあさんに餌をもらいに来たのだろう。 猫は何度も何度も餌の催促をしているようだ。 煩いな。 俺は窓を開けて下を覗くと、猫は窓ガラスに前足をついて呼んでいた。 ばあさんは病院に行っているのか、いつまでも出てはこない。 だが、猫は鳴きながら窓ガラスに向かって前足を擦るように動かしている。 鳴き声はどんどん大きくなって、耳障りになっていった。 俺は猫を追い払おうと、コップに入れた水を猫の近くに掛けた。 猫はギャッと驚いた後、俺の方を睨んだ。 だが、すぐにまた鳴きながら窓ガラスを前足で擦り始めた。 「なんだ、一体」 俺は一階に下りて庭に回った。 猫は俺に気づいていないのか、夢中で鳴いている。
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