お返しが

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お返しが

 3年前のある日曜日の朝のこと。 「ちょっと、ちょっと、みんな来て来て!」  家の中に向かって大声で叫ぶ母の声が響き渡る。それに、だらだらとリビングで寛いでいた残りの家族3人は鋭く反応。  俊敏な動きで母の元へと集まるまで10秒と掛かりはしなかったと思う。  一番最後に駆け付けた俺が最後尾から覗き込むと、我が家の玄関先には、寂しげにポツンと段ボールの箱が一つ置き去りにされている。  それは宅配便の箱で、最近めっきりお目にかからなくなったミカン箱と同じくらいの大きさ。しかし、送り状らしきものは貼られていない。  その代わりに・・・とはならないかもだけど、箱の上には「お返し」と書かれた熨斗紙が貼られている。  安易な梱包で、箱の真ん中が仮止め程度に止められているのみなのが、儚さを感じる。  普段は天然のくせに、それに一抹の不振を感じたのだろう、母はそれを自分で開けることはせずに、家族一同の助けを呼んだのだと思う。  さて、不審な箱を前に集まった家族4人。今後の行動を互いに促すように見合わせる。  そうなると、まず初めに不審物に近づくのは世帯主の役目。     
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