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それは修羅場から始まった。
いくら誕生日のサプライズだからって、アポなしで彼の家を訪ねた私も悪かったと思う。
しかし私という婚約者がいるにも関わらず、ベットで別の女を押し倒していた彼はもっと悪いと思う。
「何やってんの!?」
彼と女がベットの中から振り向いた。
「お前、何で来たんだよ!」
彼が慌てた様子で叫ぶ。
「あんたこそ、何やってんのよ!」
「え?この人誰?」
彼の腕の中にいる女が困惑した表情で言う。
「私は彼の婚約者よ!」
「えー」
女がショックを受けた顔をしていた。
私は一歩前に出る。
「あんた、浮気したのね!」
「男なら誰でもやることだよ」
彼はベットから出て、私の前に立った。
「適当なこと言わないで!」
「適当じゃねえよ!男の本能だろ!」
「本能!?それを理性で抑えるのが人間ってもんでしょ!あんた人間じゃないの?」
「人間だよ!」
「はあ嘘でしょ、あんたは人間じゃない、ただの浮気男のクズよ!」
「何だと!」
彼はベットサイドのテーブルにあったワインを掴むと、私にかけた。
目が赤く染まる。何か足に投げつけられた感じもする。
「・・・!」
彼は私に向かって言った。
「クリーニング代だ!出てけ!」
目をこすると、そこには真っ赤に染まった服と、1000円札があった。
私は悲しかった。ひたすら悲しく、絶望していた。
だが、それ以上に怒りを感じていた。
私はプレゼントとして持ってきたバーボンを開けると、彼に向かって振りかけた。
「うわあ!」
彼は目を押えて叫ぶ。
私は彼にさっきの1000円を投げつけた。
「クリーニング代よ!」
「1000円で足りるか!この服高かったんだぞ!」
「浮気の慰謝料に比べれば安いでしょ!!!」
私は叫んだ。
その時、横から声が聞こえた。
「最低ですよ、彼女を裏切るなんて」
私は振り向く。それはさっきの女だった。
ベットから降り、彼の前に立つ。
「告白されて・・・恋人になれたと思ったのに」
彼女の目には涙が浮かんでいる。
そして彼を思い切りビンタした。
「いてえ!」
「もう二度と私達に近寄らないで」
彼女は言った。
その後、私と彼女は彼の家を出ると、二人で泣きながらカラオケで夜を明かした。
これがきっかけで仲良くなり親友となり、しばらくたったころ、
彼女から「好きになりました」と告白されるのは別の話。
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