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刺青殺人事件
昭和21年8月20日、松下研三は、東亜医大の早川博士に誘われて「江戸彫勇会」の刺青競艶会を見学に来た。研三は、そこで中学時代の先輩である最上久と再会する。その競艶会の場を圧倒したのは、背中に見事な大蛇丸の刺青を持つ野村絹枝で、土建屋をしている久の兄・竹蔵の愛人であった。
絹枝の魅力に惹かれ、後日彼女を訪ねた研三は、背中の刺青の由来を聞かされる。彼女の父・彫安は、大蛇丸・綱出姫・自雷也の三すくみを、彼女と双子の妹の珠枝、兄・常太郎の3人に彫り分けたのだという。三すくみを1人の体に彫ると、3匹が争いあって死んでしまうため、タブーとされているのだ。
不安に感じる絹枝との約束で、下北沢の彼女の自宅を訪ねた研三は、たまたまやって来た早川博士とともに、内側から鍵のかかった浴室で彼女の死体を発見する。死体は首と両手両足だけで、胴体はなかった。その後、絹枝の愛人の最上竹蔵も死体で発見される。拳銃自殺のようにも見えるが、他殺の可能性も否定できない。
捜査が難航する中、絹枝の兄・常太郎を捜し当てた研三だが、事件の核心を知っているらしい常太郎の「しばらく自分に任せて欲しい」との言葉を信じて待っているうちに、彼も全身に彫った刺青を皮ごと剥がされて殺されてしまった。
責任を感じる研三の前に、一高時代の友人で、「神津の前に神津なく、神津ののちに神津なし」と激賞されるほどの天才、神津恭介と再会し、彼に謎を解き明かすよう依頼する。
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