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「こんばんは、先生」
俺に『先生』と呼ばれた男性は鬼の形相で睨みつける。
俺は物怖じせずにこりと笑った。
「何その顔。俺、呼ばれてきたんだけど?」
「……入れ」
「正式に言えばタチ専門のゲイ風俗店、ローズヒップの“アオイ”として先生に指名されて来たんだけど?」
「良いから黙って入れ! 隣人に聞かれんだろうが!」
「先生の声のほうがデカイっての」
荒々しく招かれて部屋に入る。間取りは3LDK。部屋は綺麗に整頓されているが、
リビングのテーブルの上は日本酒の殻瓶と殻のビール缶が無造作に置かれていた。
その横にチョコレートの箱と銀の包み紙が散らばっている。
「また飲んだくれてたんだ。しかも、チョコつまみに酒って……」
「割と合う」
「酒豪の味覚はわかんねぇー。んで、誰からもらったの?」
「同僚から。毎年恒例の義理チョコだよ」
「生徒からゼロ?」
「……そうだ。悪いか」
「先生にあげたら逆に怒られそうだもんなー」
「当たり前だろ。学生の本分は勉強だ。恋愛ごときに浮かれてるんじゃない」
日本酒の瓶の下には封筒が置かれていた。
その中に俺に支払われるべきお金が入っている。
「バレンタインで今頃、大好きなあの人は
恋人とイチャイチャって思ったら寂しくなっちゃった?」
先生は一瞬、息をつまらせる。どうやら図星のようだ。
「やっぱり……今日は帰れ……金は渡すから……」
「へぇ、じゃあ、俺が帰ったら一人で抜くわけ?」
先生のすぐ後ろにあるソファに押し倒す。
微かに湿った髪からシャンプーの香りが漂ってくる。
「ヤる気満々でシャワーまで浴びてるくせに……ついでに風呂ん中でアナルも解してんじゃねぇの?」
「んなこと……っ」
「否定したって先生が俺を呼んだことに変わりねーよなぁ?
したかったんだろ……じゃなきゃ、店に電話するはずないし」
揺るぎない事実を突きつけると、抵抗の力を緩められていく。
俺は鼻で笑うと、シャツのボタンに手を掛けていった。
その間、先生は俺と目を合わせないようにただ天井の一点を見つめている。
お金を払って教え子に抱かれるという罪悪感に満ちた表情だ。
だけど、どこか期待を孕んでいるようにも見えた。
それに応えるように雑な手つきでベルトの金具を外して下着ごと取り払うと、
中心は蜜が先走って小刻みに震えていた。
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