善意の糸

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「で、これがその力作ってわけだ」  中西は優斗から手渡された封筒をまじまじと眺めた。  優斗が退院してから二日後の昼だった。両親との夕食の翌日、目が覚めた後急いでペンを手に取った。しかし終わる見込みが全く立たず、仕方無く中西にメールして予定を一日伸ばしてもらっていた。 「遅れてすまん」 「そんな急がなくてもいいのよ? 締め切りがあるわけじゃないし。でも無理するのは感心しないわね」 「無理?」 「隈、出来てるわよ」  鏡を見ると確かに目元がちょっと暗い。流石はお医者さん、ペンを片手に添削する様は教師のようだが、見るべきところはちゃんと見ている。  しかしそのペンは中々動きださなかった。  「昨日は一日中これを?」 「いや。朝に少し書いた、でもやっぱり難しくて、昼にばあちゃん家、夜にダチと会った時にアドバイス貰って夜に仕上げた」 「ふぅん」  ようやく何かを描きいれたかと思ったら、すぐに優斗に返してよこした。  手渡した時とほとんど変わらず、白い紙には優斗の下手な字が並んでいた。そんなに完ぺきな出来だったろうか。ただ一点、最後の『ありがとうございました。』という文言のみが赤い丸で囲われていた。 「ココの何がいけないの?」 と優斗が聞くと、 「ソコ以外がいけないのよ」 と中西が応えた。
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