善意の糸

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「そして極めつけはコレ」  中西は封筒の方を突き付けた。裏側を提示されるも、特筆すべきことは何一つない。当然のことながら差出人の住所等は書かれているが、それが何だというのだろうか。優斗は首をひねった。 「住所、別に間違ってねーよ?」 「名前よ、名前。誰よ、『坂本真奈美』って」 「俺の初恋の女子。だって自分が貰ったら嬉しいものを送るってのがプレゼントの基本だって言うからさ」  中西は大仰にため息をついた。 「あのねぇ、確かに手紙は臓器移植ネットワークを通して名前がわからない形で届けられるわ。でもだからといってあなたが偽名使う必要はないのよ」 「そうか、喜ばれると思ったんだけど」 「ドナーはあなたのことも知らないのよ、初恋の娘なんて知るわけないじゃない。とにかくここは本名にしなさい。下手するとふざけた人が送ってきたと思われて返却されちゃうかもよ?」  封筒も優斗に突き返された。  中西は腕時計を確認し、立ち上がった。そろそろ昼休みが終わるらしい。優斗もそろそろ家に帰ることにした。メモ書きだらけの手紙を持って。  最後に、書き直すにあたって何かアドバイスは無いかと中西に聞いた。 「無理して書かなくても良いんじゃない?」  と彼女は言った。
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