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「……名前、ですか?」
「なんでもいいさ。なんだって構わねえよ、お前が俺を認識できればいいんだ」
「私などが、畏れ多いかと……」
「お前が呼ぶんだよ、お前がつけねえでどうする?」
お前は隣に控えていた神官を振り仰ごうとしたが、やめて熟慮し始めた。さっきからどうも同じ場所に暮らしている人間にしては他人行儀というか、余所余所しい。キナ臭いなあ、と思っているとお前は不意に口を開いた。
「……クルス様というのはどうでしょうか?」
少女はおずおずと言い、俺はお、と言って促す。
「十字架(クルス)?」
「えっと……」
両刃の大剣のあなた様のお姿は交差した十字に似て、刃の銀色は私が持つ十字架が光を反射する様に、柄に嵌め込まれた宝石は礼拝堂の色硝子に似ています。……そう、思いました。ぱっと長い台詞を喋ったかと思うと、目を伏せて小さな声で呟いた。
思わぬ名付けだったので黙っていると不安そうに服の裾をぎゅっと握り締めたのが見えたので慌てて気に入った、と言った。
子供のことだから縫いぐるみや飼い猫につけるような名を考えるかと思ったら十字架様と来たもんだ。雰囲気通り少し大人びた聡明な子供のようだ。
「いいぜ、クルスな。いい名だ」
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