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お前は? と聞くと少し困った顔をして黙った。
この子は親の無い孤児ですので、そういう者は普段『神の仔』と呼ばれております。隣に控える老いた神官が静かに言った。
それは名前じゃないんじゃねえの、と首を傾げながら目をやるとお前は所在なさげに佇んでいた。ああそういうことね、と察して黙る。道理で教会の表で見た子供より、俺を試した子供の数が少なかったわけだ。勇者の適性がこの教会の子供に出たはいいけど、子供にやらすには忍びない過酷な旅、だから悲しむ人のいない『神の仔』たちを片っ端から試した、って感じか。それで抜けちゃったと。ご愁傷様、と思いながら俺はなるほどね、と頷いた。
「『勇者』、とりあえずそう呼ぶ。味気ないが仕方ねえ。神の仔だとここにいる奴全員と契約することになりかねないしな」
すみません、とお前はベールを揺らして申し訳なさそうに謝った。
お前が謝るとこじゃねえだろ、と言って俺はふと気になっていたことを神官に聞いた。
「今度の勇者様はえらく可憐だが……俺を持てるぐらいはできるんだろうな? 見た感じ勇者様より俺のが重いぜ?」
すると少女はぱっと顔を上げて神官の言葉を遮るように大丈夫です、と言った。
「ちゃんと世界を救えます」
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