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その目の黒色はやはり美しく、言葉も口調も静かだったが妙に張り詰めて響いた。
その台詞は初めてだ、と思いながら俺は分かったよ、と気圧されたように言った。
少女の行動は迅速だった。乳白色の壁、アイボリーの柱に支えられ天窓と塔の天辺を色硝子で飾った静謐な教会に、翌日別れを告げた。聞くところによると孤児としてここで育てられたらしいため家も同然だろうに、深々と頭を下げて細い腕で用意された荷物を受け取り、淡く微笑んで今までの礼を述べ振り返ることもなく、いつもの無表情めいた感情の薄い顔で旅路を踏む。随分迷いがなくてこちらが拍子抜けした。とりあえず体力が心配だったが、余裕とはいかなかったものの重みによろめく程ではないのに安心する。教会の子供の中では最年長だったらしいが、俺から見れば年端の行かない子供だ。
「クルス様、もう一度詳しく魔王討伐についてお聞かせ願えるでしょうか?」
おう、とその質問に背中で揺られながら返事をし、順序立てて答える。
まず今から向かうのは近場の村だ。そして順々に北に上がっていて、その過程で少しずつ討伐なんかをこなして、装備や力を備えていく。そんなにゆったりと構えていてよいのでしょうか、と思案する様子の少女にいいんだよ、と答える。
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