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「まあぶっちゃけて言うと世界を救うマニュアルみたいなものがあんだ。神官共も落ち着いてたろ? 数百年、数千年単位で起こる予定調和のバグみたいなもんだ」
そうですか、私に勇者が務まるか不安でしたがならば安心ですね、とほっとしたような表情を見せる。あーいまいち分かってねえな、と後ろめたくなったので内心面倒くささにぼやきながら説明を足そうとする。俺からしたら、勇者なんて一時は持て囃されるが、世界のための必要犠牲として自分の人生の貴重な一時やら身の安全やらを捧げられたただの生贄だ。今度のは小さい子供だから少し気が引けるが、まあ俺からしたら数年なんて一瞬。世界が救われたらまた眠るだけ。
「あのな……勇者って結構大変よ?」
これからの話は世界を救う、っていう想像で大体正解だけどやるのは物語の主人公じゃない、生身のお前なんだから。
娯楽本みたいに傷を負っても次回の話ではなぜかお約束でリセットされてて無傷で新しいイベント、ってわけにはいかないからな?
ちゃんと選べよ、世界を救う過程でお前が死ぬことも当然あるって話だ。
死ぬってのが遠いなら、失明、その綺麗な顔に火傷、半身麻痺、車椅子生活、そういう現実で現実な想像も出来てるか?
他の奴に任せたり、世界が終わるのを眺めたり、そういうのも選べるんだってちゃんと分かってるか、と何度も繰り返した質問をした。
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