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……
「……が、……で、……遅かったら……危なかったね」
暖かい。
そんな温もりを感じる中、片耳の猫は意識を取り戻しながら声を聞いた。
体は少し痛むが、それほど気にならなかった。
目を開くと、光の眩しさで思わず悲鳴を上げ目を閉じた。
「あ、起きたかな」
聞き覚えのある声がした。
それは、茂みの中から出た時に聞こえた声だった。
片耳の猫は恐る恐る目を開けました。
「こんちには」
猫は吃驚しました。
目の前に大きな人間の顔があったからです。
猫は後ずさりをして身を丸めました。
「大丈夫、怖がらないで」
耳に心地よい低い声でした。
ごつごつとした指が片耳の猫に近づいてきます。
猫は怖くて噛みつきました。
「いっつ」
声は痛がりました。
けれど、指はひっこめず、噛みついている猫の頭をもう一つの手で撫でてくれました。
「……大丈夫。もう怖くないよ」
とても優しい温もりで。
とてもいい匂いがして。
お母さんより温かくて。
片耳の猫は口を離し、少し血のにじむ指を舐めました。
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