星の神様

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暫く歩いて、猫は思い出しました。 あの、温かい手の人間はどこにいったのだろう? 猫は走りました。 昨日は怖かった人混みの中も。 他の猫がいる住処の前も。 色んな音がする道も。 あの人間の姿を。 匂いを求めて走りました。 でも、見つかりませんでした。 匂いは他の匂いに交じってわかりませんでした。 ふと見上げると、空はお星さまの光が見えるほど暗くなっていました。 猫の視界がゆっくりと、歪んでいきました。 「……言ってない」 ありがとうを。 何も、言ってない。 言いたくても言えなかった言葉。 お礼なんて何もできないけど。 せめて言葉だけは伝えたかった。 けど、出来なかった。 それが、片耳の猫は心残りでした。 「会いたい」 優しい、優しいあの人間に。 あの心が溶けるような優しい温もりに。 会いたい 会いたい 会いたい 「会わせて……」 届くことのない願いを。 猫は星空に向かって鳴いた。
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