片耳

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そして、ある日。 餌を捕りに行ったお母さんが帰ってこなくなりました。 猫の世界ではよくあることでした。 皆、一人で動けるぐらいは大きくなっていたので、問題はありませんでした。 けれど、片耳のない猫には、問題でした。 守ってくれていた存在がいなくなった猫は、住処(すみか)から追い出されました。 「何で? 同じ猫なのに。私はここにいちゃいけないの?」 片耳の猫は悲しくなって尋ねました。 姉弟たちはそんな猫を笑いました。 「一緒だって? どこが?」 「よく見てごらんよ。君には一つしか耳がない」 「でも僕たち猫は皆二つある! だから君は猫じゃない」 「そう、猫じゃない!」 「仲間じゃない!」 「出ていけ!」 「出ていけ!」 姉弟たちは口々に叫びました。 片耳の猫は涙を流しました。 「同じだよ。耳がないだけで、同じだもん。私は……」 片耳の猫は必死に言いました。 けれど聞く耳を持ってくれない姉弟は砂をかけてきました。 砂の礫が痛いほど片耳の猫の顔に襲い掛かります。
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