猫と輝……と、絵梨

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「先ほど親御さんたちにも説明しましたが、今の同居人は貴方がただということで。小さいお子様には難しいかもしれませんが――」 「構いません。この子が一緒に聞くと言って聞かないので」 「では、説明します。まず彼女は信号無視のバイクに轢かれ飛ばされた後尖ったガードレールにお腹を酷く打ち付けました。その際に中の臓器が損傷し移植を必要としています。移植をすれば助かるでしょう」 病院に着き絵梨に会う前にと医者に連れていかれた二人は説明を熱心に聞いていた。 星はあまり理解できなかったが、”助かる”という言葉に安堵した。 「――ですが、その臓器が見つかる可能性が低い。そして彼女には時間がない。この二つの問題点があるため、このまま臓器が見つからなければ……もって、二日でしょう」 「二日!?」 輝が絶望の声を上げた。 「で、でも、見つかったら、助かるって」 星が声を絞り出したら医者は重々しい表情で頷き、言った。 「見つかれば、助かります。ですが。見つかる可能性は……多く見積もっても、5パーセントでしょう」 「何でそんなに低いんですか!?」 輝が声を荒げて立ち上がった。 その形相に星も驚き怯え、身を縮ませた。 「タイミングが……悪かったんです。丁度、絵梨さんに必要な臓器が最近移植で使われたばかりで。その、入れ違いのような形でして。そのためまた仕入れるとなると早くても3日で……。運が良ければ数時間後に見つかりますが、ここまで急だとその可能性は――」 口籠る医者の言葉は、その表情の暗さからとても信憑性があった。 「そん……そんな……」 輝は、それ以上何も言えなくなった。 輝は頭でわかっていたのだ。 ここでどれだけ怒鳴り散らしたとて、どうにもならないことを。 けれどそれよりも絵梨が助からない可能性が高いという事実に絶望に打ちのめされていた。 「……でも、可能性を捨てず、絵梨さんの傍に居てあげてください。痛みに耐えながらお二人の名前を呼んでいました。きっと、今でも待っておられます」 看護師の声に輝はハッと頭を上げた。 そして、星を見た。 星はまた輝が怒鳴るのではないかとビクビクしながら身を縮めていた。 「驚かしてごめんよ……星、絵梨に会いに行こうか」 輝が、そっと星の頬を撫でた。 星はこくりと頷き輝と手を繋いだ。 これが。 星と輝が手をつないだ最後だった。
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