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そこで、片耳の猫は水の匂いのする方に歩きました。
すぐに見つかり、猫は一口舐めました。
美味しい水でした。
砂だらけの顔を水の中に突っ込みました。
前足で一生懸命砂を落とし、水をいっぱい零しながら猫は洗いました。
身体を振って目を開けると、そこは人の家でした。
片耳の猫は、人が飼っているペットの水を勝手に飲んでしまったのです。
けれど猫はそれが悪いことだとは知りません。
猫は今、自分の渇きを満たすことで頭がいっぱいです。
水の入った容器を空っぽにした猫は満足しました。
でも、お腹が空きました。
辺りを見回すと、目の前からおいしそうな匂いがしました。
近づいてみると、香ばしい匂いのするものが置いてありました。
片耳の猫は食べました。
とても美味しくて喜んで食べました。
それはペットの餌でした。
焼いてある魚でした。
口の中でホロホロと崩れるそれはとても美味しくて。
猫は夢中で食べました。
「こらあ!」
大きな声に驚いて猫は後ろにジャンプしました。
顔をあげると、目の前には大きな猫がいました。
「お前、俺の飯を勝手に食べたな!?」
大きな猫は怒って喚きます。
こんな大きな声で怒られるのは初めてでした。
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