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まだお腹の空いている猫は、耳を畳んだままそろそろとその手に近づきました。
鼻を近付け、匂いを嗅ぎました。
空腹をくすぐるいい香りがしました。
猫は夢中で小魚にかぶりつきました。
「うんうんお腹空いてたんだねぇ…………おや?」
人の声が、優し気な口調から、急に険しくなりました。
でも猫は食べるのに夢中で変わった雰囲気に気づきませんでした。
人が、猫の頭を触りました。
片方の耳を撫でました。
そして、もう片方に手を伸ばし――――
「ぎゃあああああ!」
大きな悲鳴と共に猫の背をひっつかみ投げました。
片耳の猫は吃驚しましたが、何とか着地出来ました。
何故投げられたのかわからず顔を上げると、そこには、鬼のような顔をした人がいました。
その目は先ほどの大きな猫より大きく見開かれ、ギラギラと光り、猫を恐怖のどん底に落としました。
あまりにも恐ろしくて、猫は体を震わせました。
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