星と人間

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星と人間

「……! ……ぇ!」 遠くから、声が聞こえた。 どこかで聞いたことのある声だった。 でも、片耳の猫は体が重くて起きたくなかった。 もっと寝たくて、体を丸めた。 だけど、いつものように丸くなれなかった。 「……! ……ねぇ!」 声が、段々はっきり聞こえてきた。 それは、やっぱり聞き覚えのある声だった。 片耳の猫は顔をかきました。 そこで、その手が猫の手じゃないのに気付きました。 猫の手より大きな、でも柔らかい、温もりのある、手。 それは、いつしか頭を撫でてくれた人間の手にそっくりで。 「ねぇ、大丈夫!? やっぱり病院に――」 「ニャ!」 片耳の猫は起き上がった。 勢いよく起き上がったせいで頭がくらっと揺れたが、猫は声の方を見た。 その声は。 その聞き覚えのある声は。 「ああよかった……大丈夫?」 彼は、猫に微笑んだ。 間違いない。 彼は、あの時の人間だ。 片耳の猫は人間に飛びついた。 彼の胸に顔を埋めると、そこはとても暖かくてあの時と同じ匂いがした。 でもあの時よりもっと濃くて、暖かくて。 片耳の猫はその胸に顔を摺り寄せた。 「え、ええ!? ちょ、ちょっと!?」 彼が、戸惑ったような声を上げた。
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