プロローグ

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 ――ここは某温泉郷にある旅館のひとつ、屋号を「翔雲亭」という。私の実家で、小さいけれど創業80年を超えるそれなりの旅館だ。といっても、この辺りには100年越えの老舗宿もちらほらあるから、さほど胸を張って言うことでもない。  そんな歴史ある旅館だけど、近年、宿泊客は右肩下がり。うちに限ってのことではなく、この温泉郷自体が客足の伸びに悩まされているらしかった。なんのエイターテイメントもない古き良き時代の温泉宿は、最近は流行らないらしい。  そこに追い打ちをかけるように、隣接した都市に最新鋭の大型アミューズメントパークができることになった。建設はもう数年前から始まっていて、今年の秋にはオープンする。施設の中にも豪華ホテルができるらしかった。  とんだライバルが出現したものだ。  
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