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奇子もつられて見上げると、正方形の薄い線が見えて、その中に手をかけられそうなくぼみがあった。海野が靴べらでくぼみを押すと正方形は持ち上がり、ずらされるとロープのはしごが出現した。
「すごい! まさかここに屋根裏部屋があるなんて!」
「はしゃぐのは部屋に入ってからにしてくれ」
海野は先に屋根裏部屋に登る。
見上げても真っ暗な正方形が明るくなると、海野が顔を出す。
「ゆっくり上がってこい」
「はい」
奇子は足元を見ながら、慎重に上がる。
なんとか登りきると、想像していたより広々とした空間がある。壁は本棚で埋め尽くされ、本やCD、DVDが並べられている。シングルベッドの前にある小さなテーブルには、リモコンがふたつと灰皿並んでいる。
「すごい……!」
奇子は目を輝かせながら室内を見回す。
海野はロープのはしごを回収して出入口を塞ぐと、ベッドに腰掛けた。
「奇子、こっちに来い」
「はい」
海野が自分の隣を軽く叩きながら言うと、奇子はそこに座る。
「これ、全部健次さんが集めたんですか?」
奇子は興味深そうに棚を見ながら聞く。
「ほとんどは自分でだが、親父からもらったやつもある。あぁ、あとは……」
嫌なことでも思い出したのか、海野は疲れた顔をする。
「どうしたんですか?」
「陽介から押し付けられたものがある……」
「いったい何を押し付けられたんですか……」
奇子は1度だけ会ったことがある海野の幼馴染の顔を思い出すが、彼が押し付けたものなど、見当がつかない。
「俺らが小学生の頃に流行った戦隊もののDVD……」
海野から聞いた途端、奇子は吹き出した。
「健次さんも小さい頃は、そういうの見てたりしてたんですね」
「いや、見てねェ。周りが戦隊ものだのなんだの見てた頃から既に、親父の影響受けて洋画ばかり見てた」
「渋いですね……、健次さんらしいですけど。でもなんで陽介さんは、そんなもの持ってきたんですか?」
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