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自由
宝くじに当選し大金を得た私は、働いてお金を稼ぐ必要が無くなった。
私は仕事を辞めた。
私は自由になった。
この圧倒的な自由を手に入れた対価として、私は何を失うのだろうか。
ふと、そんなことを思う。
私は神様に相談することにした。
「神様。ご相談があります」
「あぁ」
「私が宝くじに当選して、働く必要が無くなって、圧倒的自由を手に入れてしまった件について‥‥」
「あぁ。知ってる」
「この圧倒的自由の対価って何になるんでしょうか。代わりに何か大きなものを私は失う必要が‥‥」
「命」
「え?」
「自由の対価は"命"だよ」
「私‥‥死んじゃうんですか」
「うん。自由のお返しとして、君は命を差し出すことになるね」
「それは‥‥いつお返しする必要が‥‥」
「さぁ。明日かもしれないし、明後日かもしれない。はたまた3年後。いやもしかしたら50年後とかかも。わかんない」
「はぁ」
「まぁ、あんまり気にしなくていいよ。わかんないんだし」
「‥‥わかりました。すいませんお忙しいところ。失礼しました」
「いやいや。どうぞご自由に」
神様との相談を終えた私は、外の空気を求めてベランダへ出た。
下の道路から、下校中の小学生たちのじゃれ合う声が聞こえる。
夕焼けに染まる空をぼんやりと眺めながら、まだ働いていた頃のことを想った。
もし私が今も働き続けていたら、今頃私はあの会社のあのデスクに座り、あのパソコン画面とにらめっこをしているのだろうか。
きっとそうだ。
私のあのデスクには今誰が座っているのだろう。
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