第3話 夏のおとずれ

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誰だろう!? 通話ボタンを押すか迷っていると、電話は切れた。 …と思ったら、再び音楽が流れ出す。 私は恐る恐る電話を取った。 「もしもし?」 「……………」 何も言わない。 間違い電話かな。 そう思い、切ろうとしたときだった。 「ナナミ…ちゃん…?」 聞き覚えのある優しい声が、私の名前を呼んだ。 「えっ…?どちら様ですか?」 一瞬だけ間があくと、電話の向こうの彼は、少し緊張した声で話し始めた。 「如月です…如月夏樹(きさらぎなつき)。 分かるかな? さっき東浜でガクたちと一緒にいた…」 思わず耳を疑った。 キサラギ…ハルくんと同じ名字? あの、ナツさん!? 「えっと…如月さんって、 ハルくんのお兄ちゃんのナツさん?」 「うん、そうだよ。」 電話の向こうの相手がナツさんだと思うと、携帯を持つ手が震えた。 私が何も言えずにいると、ナツさんは続けた。 「ナナミちゃん。 さっきの場所、、公園の前にいるんだけど…今から会えない?」 「えっ………?」 「ガクの家行くの、5時半だよね? それまで会えないかな?」 ナツさんに会うの? 今から? 私はついさっきまでの現実とかけ離れている出来事に、うまく頭が回らない。 「………はい。 すぐ行きます……」 反射的に、私はナツさんにそう返事をした。
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