第3話 夏のおとずれ

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ナツさんって、どんな格好が好きなんだろう。 少しでも可愛く思われたくて、しばらく鏡の前でファッションショーをしてみたが、 結局はタンクトップにショートパンツと無難な格好に着替えて、待ち合わせの場所へと急いだ。 公園の方を見ると、遠目からベンチに座ってタバコを吸っているナツさんの姿が見えた。 ガッくんたちは誰も吸わないのに珍しい。 けれどもタバコを吸っている姿もやはり絵になる。 ナツさんと目が合ったので、手を振った。 「あの…お待たせしました。」 「ううん、全然。 こちらこそごめんね。急に呼び出して。 来てくれないかと思った。」 「あははは…。」 ナツさんは私によく冷えたスポーツドリンクのペットボトルを渡した。 「ナナミちゃんが、噂のガクの従妹だったんだね。」 「噂って?」 「特に何てことはないんだけど、ガクが妹みたいな従妹が海南に来たって言ってたから。」 「そうなんですか……」 ガッくん、何を話したんだろう。 気になるような、けど聞かない方がいいような。 そんなことを思っていると、ナツさんは自分が座っている横をポンポン、として私を手招きした。 「立ってないでここ座ってよ。 あ、ちょっと熱いかな? タオル使っていいよ。」 さすが6個も歳上とだけあって、ナツさんはかなりの紳士だ。 私はベンチの温度を確かめながらゆっくりと腰かけ、そっとナツさんを見上げた。 初めてこんなに明るい場所でまじまじと見たけれど、いつものコンビニで見る以上に、整った綺麗な顔だな…。 改めて、私はナツさんの横顔に見惚れていた。
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