消せない十字架《きおく》(過去の話)

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エリは、私と同じクラスの原口に恋をしてしていた。 運動会が終わり、紅葉が始まろうとしていた10月のことだった。 部活の終わり、私はエリから一枚の封筒を渡された。 中に入っていたのは、この頃流行っていたプロフィール帳。 「ナナ、一生のお願い。 原口にこれ渡してくれない?」 「えっ?原口? ほとんど話したことないんだけど…。」 原口はちょい悪系のイケメンで、学年一のモテ男だ。 だが、私は原口が嫌いだった。 いつも威張ってて、しょっちゅう女をコロコロ変えていて。 そして不真面目だが要領が良く、先生からは絶対的な信頼を得ている。 出来れば関わりたくないのが本音だ。 でも、恋するエリが可愛いのと、 エリからのお願いを断りきれないのと。 翌日、私はプロフィール帳を原口に渡した。 もちろんエリからのものだと伝えたうえで。 エリにプロフィールを渡すと、泣いて喜んでくれた。 それからというものの、私は帰りにエリとともに原口を待ち3人で帰ったり、休みの日に3人で遊びに行ったり…。 いつも原口を誘うのは私だった。 エリから誘うことは一切なし。 そして1ヶ月経つころ、私は部活帰りに原口に呼び出される。 「オレと付き合わない?」 「ごめんなさい…。」 この翌日から、私の地獄の日々が始まる。
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