消せない十字架《きおく》(過去の話)

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「おはよう。」 「……。」 エリはもちろん、部活の友達、クラスメイト… 行きかう皆、私が存在しないかのように、挨拶をスルーする。 おかしいな。 そう思いながら席につくと、机には『裏切り者』の落書き。 理由を聞く以前に、私が話しかけようとすると、誰もが無視して逃げていく。 あっ…原口に告白されたのが原因だろうか。 だけど、誰にも話していないのに…。 そんなことを思っていると、『調子に乗ってる奴』『ヤリマン』 そんなヤジが耳に届く。 犯人は原口の取り巻きだ。 私が告白を断ったのを根に持った原口が、クラス中に言いふらしたのだ。 そしてそれを耳にしたのがエリの取り巻き。 相手が悪かった。 この学年でエリに逆らえる人間はいない。 シカト、陰口、そして嫌がらせ… トドメは家に届いた手紙だった。 『学校に来るな、この裏切り者。』 エリの字でも原口の字でもなかった。 この翌日から、私は不登校になった。
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