沖田総司 最期の一日

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土方は、彼がずっと死にたいという思いを胸に秘めて戦っている事を知っている。 そうなったのは近藤の死という悲報が入ってからの事だ。 下総流山で近藤が自分たちを逃がすため大久保隼人と名乗って投降した時、総司は今までに見たことのないくらい荒れた。 幼い頃から同じ釜の飯を食べてきた近藤ですら一瞬怯んだほどである。 近藤が供にと指名した野村と村上を押しのけ、自分を供に付けるよう迫ったが、頑として受け入れられなかった。 「総司、お前には一番大切な役目を任せる。トシの事を守ってやってくれ」 そう言って本陣の屋敷を出て行った近藤の後姿をいつまでも恨めしそうに見ていたのを土方は昨日の事の様に覚えている。 きっとあの視線は近藤に向けたものではなく、己に向けたものだ。全てを呪うような、そんな静かな狂気を湛えた目を土方は初めて見た。   それからの総司は戦い方がすっかり変わってしまった。 元々先頭をきって敵陣に突っ込んで行く戦法の総司は傍から見れば一見何も変わらないが、土方には分かる。   生きようという意志が全く感じられないのだ。自暴自棄になり、ただただ敵を斬り倒す。 まるで鬼の如く。   それでも毎回生きて帰ってくるのは彼の剣才と近藤の言葉のおかげだろう。 総司本人にとってそれは幸運な事なのか、不幸な事なのか。誰にも計り知れない。 「土方さんを守るのは私の役目ですから」   近藤の死を知った総司は虚ろな目でそう言った。 すっかり口癖になったこの言葉が総司をこの世に繋ぎ止めているようで、土方には痛々しく思えた。 大勢の前では気丈に振る舞い、笑顔さえ見せているものの、土方と二人きりになると時折そんな表情をする。
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