沖田総司 最期の一日

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新選組が居る駐屯所近くまで来ると馬から降り、手綱を引いて出来るだけ足音を忍ばせた。 誰かに見つかってどこに行っていたのかと問いただされると面倒だ。 それに、わざわざ説明する程の事でもない。結果的に自分は帰って来たのだから。   適当な木に馬を繋いでいると、総司の姿を目ざとく捕えた島田魁が駆け寄ってきた。 また面倒な人に見つかったものだ。総司は小さく溜息を吐くと、島田の方へと振り返った。 「只今戻りました」 「どこに行かれていたのですか」 「土方さんの所へちょっと」 「五稜郭までですか?供もつけずに」 散歩にでも行っていた様な総司の挨拶に島田は目を見開いた。 今彼らが居る場所から五稜郭までは少し距離がある。 蝦夷共和国の支配領域であるとはいえ、夜に一人で出歩くのは危険な事だった。 「この子が頑張ってくれましたから」 危機感を全く感じることなく労う様に馬を撫でる総司を見ると、島田は呆れて何も言えなくなってしまった。 小言の一つや二つ、言いたかったのだろう。押し込められてしまった言葉で口の中がむず痒い。
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