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「矢やクナイなどの飛び道具と比べれば幾分か速いとはいえ、鉄砲玉も消えるわけではありません。飛んで来る物は良く見て避ければいいだけの事です」
ある日、どうやってあの鉛玉の雨が降る中に飛び込んでいつも平気な顔をして帰って来られるのかと聞いた新選組の新兵に総司はそう答えた。
「それが出来れば誰も苦労はするまい」
後でその話を聞かされた土方は呆れたように溜息を吐いた。
それをいとも簡単にやってのけ、且つ自慢するでもなく当たり前の事とでも言う様に話すのは総司位のものだ。沖田総司が沖田総司である所以だ。
新兵が外で舞い落ちる葉を相手に剣の稽古をしている総司を羨望の目で見ている一方で、横に並んだ土方は悲愴に満ちた視線を送った。
絶対的強さというのは傍から見れば羨望の対象だろう。
けれど、それが当の本人ともなれば幸せな事なのか甚だ疑問である。少なくとも一番近くでずっと見てきた土方には総司が哀れで仕方がなかった。
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