沖田総司 最期の一日

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まったく、近藤はとんだ重荷を任せて逝ったものだ。 そう思う土方自身も託された新選組を守ろうと躍起になっている事を自覚している。 軍議を終え、箱館奉行所内にある自室に向かいながら、土方は溜息を吐いた。 明日、新政府軍は箱館に総攻撃を仕掛けるつもりらしい。 どうやらこれが最後の戦いになりそうだ。だからなのだろう。鳥羽・伏見の戦いに始まったこの戦での事が走馬灯の様に頭を駆け巡った。 京にいた頃からの新選組隊士はすっかり減り、試衛館時代の仲間は土方と総司の二人きりになってしまった。 その総司とも、もう会う事はないだろう。少なくともこの戦が終わるまでは。 総司は今頃、弁天台場の近くで新選組隊士たちと行動を共にしているはずだ。 この配置に総司は大分渋った。 今まで新選組ではなく、頑なに土方と行動を共にしていたからだ。 近藤の言葉を守ろうとしていたのだろう。 死の危険がある以上、絶対に離れないとでも言うように土方の命令すら無視して傍にあり続けた。   近藤の言う事が総司にとって最優先事項と知っている土方は仕方なしに総司の行動を黙認してきた。 そうでなければ総司が今にも消えてしまいそうだったからだ。   けれど、ここまで来てしまった以上、もう個人の我など通してはおけない。 だからこの日の夕刻、軍議に向かう前に総司を無理矢理弁天台場へ送り出したのだ。 馬上で恨めしそうに土方を睨み付けた総司の顔が脳裏にしっかりと焼きついている。
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