沖田総司 最期の一日

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最後の最後に嫌われてしまった。 そう思いながら自室の扉を開けると、暗い部屋の中で誰かがソファに寝そべっているのが目に入った。 「誰だ」 警戒心をむき出しにした声が部屋の中を木霊する。   これだけの警備の中で何の騒ぎも起こさずここに乗り込める者など敵にもいるはずがない。 だが、土方の部屋に勝手に入る旧幕府側の人間を一人しか知らない。 そしてその一人は今頃、弁天台場近くにいるはずだ。   手に持っていたランプを高く掲げると、ソファの人物はゆっくりと起き上がった。 「あれ、土方さん。遅かったですね」 そう言って笑ったのは、なんと夕刻見送ったはずの総司だった。 「何故こんな所にいる」 部屋の明かりを灯すと、総司の向かいにあるソファに腰かけた。 彼の飄々とした顔がこれほど憎らしいと思ったことはない。 「何故って、帰って来たからに決まっているじゃありませんか。土方さんと話しをするために」 そして新選組の方は島田たちが取り仕切っているから自分がいなくても大丈夫だという事、土方は自分がいなければならない事をひとしきり主張した。
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