【あの日失ったもの】

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あなたは頭のいい子。でもだからこそ、いろいろ考えちゃうと思う。自分のことや、周りの人のこと。 でも自分を大事にして。あなたの人生はあなたのものだから。 あなたにはまだまだたくさんの可能性があるの。お母さん、あなたがこれからどんな大人になって、どんな人とお付き合いして、どんな人になるのか、すごく楽しみ。 だから……、 だからあなたは、あなたの人生を楽しんで』  愛の言葉がつまってくる。可憐は自分でも気づかぬまま、目元を拭っていた。 『お父さんはもう大人だから、あなたよりは大丈夫。でも男だし鈍いから、可憐が助けてあげて』  父の話になり、少しうつむく画面上の愛。 『お父さんもきっと、傷ついてる……。 でもお父さんお人好しだから、そういうところ見せたがらないと思う。昔からそうなの。強がりで。あれでもプライドあるのよ』 苦笑いしながら可憐を見つめてくる愛。可憐の溢れる涙は、もう止められなかった。 『可憐……。 幸せになって……。 これが私からの、最後のお願い……。 お父さんに似たその優しさ、私に似た頭の良さ。 それがあればどんなことにも負けないから。 あなたは大丈夫。 お父さんとお母さんの子だもの。 二人で頑張って育てたんだもの。 ピアノのコンクールだって金賞だったし、第一志望の高校にも受かったじゃない。 絶対大丈夫……。     
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