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簡潔に言えば、遭難したのだ。それはある種の罰だったと今では捉えているし、正しく因果応報というやつだろうが、そのとき私は言葉にしようもない不幸感に襲われていた。
ーーなんで、俺がこんな目に。
流れてくる涙も凍り、真っ赤な手足の端が炎で焙られた如く痛む。あまりのストレスに歯ぎしりしながら私は世界を恨んだ。
不条理だ、理不尽だと。
「……なん、だ?」
そこでふと、脳の深淵から淡い光がポツポツと浮かんできた。粒子ほどの大きさで輝くそれは星の数ほど溢れ、不規則に動きーーやがて一枚の絵を形作る。
私は息を呑んだ。絵には、悪友達の姿が描かれていたのだから。
薄暗い放課後の教室。何気ない、ドラマやゲームの話をしている。けれども輪の中に私はいなくて、ちくり、と胸が針で刺された気がした。
「つーか、あいつなんなの?」
その声を聞いた刹那、胃の奥底かららおぞましいほどの百足が沸く。堪らず嗚咽するが、次から次へと沸いてくる。“あいつ”が誰を指すかすらも分からないのに、背筋が凍るような寒気を感じた。
「〇〇? ああ……」
〇〇?
最も私が聞き覚えのある名前だった。
寒さも痛みも消え去り、幻覚という逃げ道さえも浮かばなかった私は「“あいつ”が私である」と知っただけで得も知れぬ恐怖を覚えた。心拍音がうるさくなり、嘘みたいに息ができなくなる。まるで喉の底に大きな鉄球を詰められている感覚に、焼けるような焦燥感が競り上がってきた。それを吐き出そうと喉元に力を入れては口を開けてを繰り返すものの、その度に鉄球は奥へと逃げていく。
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