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「好きよ、真紀」
それが彼女の口癖だった。
あなたの髪が好き。
あなたの瞳が好き。
あなたの唇が好き。
あなたの声が好き。
事あるごとに、彼女は私を好きだと言った。
恥ずかしいからやめてくれと言っても、全く意に介さない。
それどころか私をからかうかのように、日ごとに言葉は増していった。
私の全てを受け入れてくれる彼女に、私もまた惹かれていった。
しかし、ふと思う。
彼女から受けるこの好意に対し、私は何か返せているのだろうか。
思えば彼女の真っ直ぐな好意が恥ずかしくて、いつもぶっきらぼうな態度をとっていた。
けれど面と向かって好きと言うのは恥ずかしい。
だからせめて行動で伝えることにした。
深呼吸をして、覚悟を決める。
隣に座る彼女の滑らかな手の甲に、私の少し汗ばんだ手のひらを重ねた。
「どうしたの?」
普段の私からは想像できない行動に、彼女は少し驚いたような表情を浮かべた。
別に、と顔を背ける。
一瞬の間があり、彼女は笑った。
まるで全てを見透かされたかのようで、私の顔は更に熱くなる。
彼女が手のひらを上にし、自然と絡み合う指先。
「真紀」
名前を呼ばれ、振り向く。
「好きよ、真紀」
ああ、まただ。
これじゃキリがない、と彼女にバレないよう溜息を吐く。
次はどんなお返しをすればいいのだろう。
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