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「…描いてよ」
耳元で呟かれた言葉に、え?って声が漏れる。
「今の俺、…咲羅のこと好きな俺を、描いてほしい」
さっき擦った目からまた涙が溢れてきて、でもすごく、すごく嬉しくて、笑みも溢れる。
「…うん」
粋な言葉とか何も思いつかなくて、それでも嬉しいとか、描きたいって気持ちとかが伝わってほしいなって思って、レンの背中に腕を回した。
「今度はずっと、傍にいて」
少しだけ震えたレンの声を聴いて、微かに体を離す。
見上げたレンの目には涙が溜まってて、なんかすごく愛おしくて、掛かった髪の毛をよけて頰に唇をつけた。
一瞬レンが息を呑んだのがわかって、ちょっと嬉しくて。
顔を離すと、目から一粒涙を零したレンが柔らかく笑って、
それを見た俺も、泣きながら笑って、言葉を零した。
「…レンの傍にいる」
二人ではにかみながら、鼻を擦り合わせて。
「レンのカレー食べたい、あとオムライス。あ、それと、ベーコンエッグ。食べれなかったから」
「食べ物のことばっかり」
「いいでしょ、今度は食べられるうちに食べとかないと」
「…これからずっと一緒にいるんだから、そんな焦らなくていいじゃん。いつでも、何回だって作るよ」
「楽しみ、でも翔さんのご飯も食べようね」
「はいはい、…咲いたらさ、一緒に見に行こう、桜」
「…うん、もうちょっとだね」
こんな時間が、ずっと、続きますように。
目を閉じて、噛みしめるように祈った。
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