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なんとか単位を取得し終えて、無事に卒業することができた。
時間の縛りがない仕事をしているのは、朝が弱い俺にとってはかなりありがたい。
四月、道がピンクの絨毯を敷いたみたいになってるのを綺麗だな、って眺めながら、最近気に入っているカフェのテラスでコーヒーを飲みつつパソコンを開く。最初は訳わからなかったパソコンも、領の教えと一年半という時間のおかげでかなり使いこなせるようになった。
明日は久しぶりに、領のお父さんに会いに行くことになっている。
領を車で迎えに行って、隣県の実家まで向かう。約束は十時だから、早起きしないとな。
ぼんやり考えながらふとパソコンから視線をあげると、斜め向かいのテーブルに座る男が目に入った。
色、白。
春の陽に照らされている肌が、白っていうか、もはや透明に見えるくらい。
下向いて何かノートに書き込んでいて、長い前髪で目が隠れている。
なんとなく、その顔が見たいと思った。
その男が顔を上げることはなく、パソコンに再び目線を落として仕事を再開した。
パソコンとにらめっこしていると、テーブルに置いたスマホが鳴る。
この前飲みの席で会ってなんとなく連絡先を交換した女の子から、会いたい、とのこと。
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