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不思議な少年だった。しかし、それと同時に、彼は同じなのだと思った。だから
「力を貸してくれ」
橋の欄干に凭れていた晴明に、そう声を掛けていた。晴明は初めびっくりしたようだったが、すぐに何かを察してくれた。
「無理。力は貸せない。でも、傍になら、いていいけど」
そうやって、笑ってくれた。自分にそんな無防備な笑顔を向ける人は、後に白虎として存在する彼以外にはいなくて、びっくりしてしまった。
「大切な人を、無くしたんだろ?」
「ああ」
にっこりと笑って訊かれたことに、朱雀は何の躊躇いもなく頷いていた。これもまた、不思議なことだった。
「俺もなくした。いや、あの人は一度だって、俺自身を見てくれなかった。ただの後継者。それも都人の血を半分は引く、とても使い勝手のいい後継者としてだけね」
そして、こともなげに語られたことに、朱雀は驚いて何も言えなかった。
「うち、狭いけど大丈夫?」
「え、ああ」
その日から、晴明の傍で過ごす日々が始まった。適当で面倒臭がりで、本しか友達のいない奴。でも、そんな晴明の横は、とても心地よかった。
「だから、もう少しだけ」
白虎がくれた、魂が元に戻っても存在できる間は、彼の傍で恩返しがしたい。もう少しだけ、その無防備な笑顔を見ていたい。
「とても、大切なんだ」
春風の吹く庭で、晴れ渡った空を見上げながら、ずっと傍にいてくれたもう一人、白虎に向けて、朱雀はそう呟いていた。
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