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私が隣にいることを、あなたが辛く思っていることを知っている。
どうしてそんな選択をしたのだと、いつも自分を責めていることを知っている。
でも、傍にいないなんて選択肢はどこにもなかった。
あの日、あなたが恨みを抱いたまま、恨みに飲まれそうになったまま死んでしまい、このままでは御霊となってしまうからこそ、すぐに決断できた。
「間に合ってくれ」
あの時の必死さは、二百年経った今でも驚くほどの力だった。いわゆる、火事場の馬鹿力というやつか。
「これだ!」
事件で残る唯一の証拠品。その矢を見つけ、そしてそれで、自らの命を絶った。矢で喉を突き、あの方を一心に思って死んだ。そうすることで、外法が完成する。それに賭けた。
「白虎」
「はい?」
そこで昔に思いを馳せていた白虎は現実に戻される。そして、隣にいる彼、救いたかったあの人、今は朱雀と名乗る彼を見る。
「俺は、過去に勝てるだろうか?」
その朱雀は今、都に現れた自分の恨み、御霊となった自分との戦いを控えていた。その緊張が、純化した彼の魂を救った自分にも流れてくる。
「大丈夫ですよ」
あなたは心の底では兄君、桓武天皇を恨んでなどいないのだから。でも、それは言えない。
言ったら、朱雀は否定してしまう。それは、自分が外法にまで手を出して彼を救った意味が失われることを意味している。
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