新しい出来事

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 帰りには引出物をいただき解散となった。お年寄りのパワーってすごいし何だか温かい気持ちになれたのが嬉しい。僕も歳をとったらあぁいうサークルに入っていい仲間を作りたいと、帰り道そんなことを考えていた。 1週間後の土曜日、隣のスミさんがうちに来た。 「こんにちは。この間は来てくれて有難う。旅行行ってきて、これ伊豆のお土産なんだ。お茶菓子にでも、おうちの人と一緒に食べて」 「あ…わざわざ有難うございます」 受け取るとスミさんはニコニコしながら家に戻っていった。そして昼頃になると玄関先の道路をザワザワと人の声が通っていった。 ーー何だろ、自治会の歩け歩けの日だっけ、とリビングで何となく思っていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。 「はーい」 玄関から顔を出すとこの間隣の席にいたおばあちゃんがそこにいた。 「おーいたいた。今から徳さんとこ来い。みんなでお昼食べるから一緒にやらんか」 それからというもの、ゲートボール会の会合があるたび、隣の家ということもあって誰かしらが毎週のようにうちに来て僕を連れて行く。今ではすっかり一員のような待遇になり、さらには朝9時からのゲートボールの参加も誘われたがそれは恥ずかしくてイヤだと頑なに断った。ここまで親しくなってくるとイヤなものをイヤだと言える間柄にまでなる。参加出来ないならせめてマネージャーになれーと徳さんは言うが、20名の介護はイヤだと笑いながら断った。  住み慣れた町のこの光景の中、僕に大勢の友達が出来た今年の夏をいつまでも大事にしたい。  今井のおじいちゃん、いつまでも仲良くね。僕はあらためて心からそう感じた。
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