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最後の結婚式っておじいちゃん…もう80は過ぎてるだろうに、いま流行りの年の差婚?
「あの…相手の方はおいくつなんですか?」
「75。もうこの歳だからよ、早いとこ挙げたいんだよ。時期的には混んでないって店の人が電話で言ってたからね、安くて早くて良いとこ探してんだよ」
乗りが牛丼屋だった今井のおじいちゃんは笑顔を見せていた。
遠くにバスが見えた。パンフレットを鞄にしまい込み、しわくちゃな手で僕に握手をした。
足元を気にしながらノンステップバスにゆっくりと乗り込む。今井のおじいちゃんは前の方の席につき、席から手を振って「バイバーイ」と子供のように口パクしてる。その光景がおかしくて笑いながら僕は手を振り返し、おじいちゃんの嬉しそうな顔を見送った。
それからしばらくすると僕あてに招待状が届いた。隣なのにわざわざ郵送で、鶴の絵が印刷してある切手を貼った往復ハガキが僕あてに届いた。
ーーいや、こういう時は親が行くでしょ。
何かの間違えだろうとそう思ってハガキを持ちおじいちゃんのところに行った。
ピロリロリーン!呼び鈴を押す。すると中からパタパタとスリッパが擦れるような足音が聞こえ玄関の扉をが開いた。
「こんにちは」
「あぁこの間はどうもね」
「あの、ハガキ届いたんですが、これ僕あてになってて、親の間違えですよね?」
「いや、あんたでいいんだよ。あんたに来てもらいたいと思って書いたんだ。あんたの名前の漢字がわからなくて平仮名で悪いなー」
「でも僕なんか…」
「あのよー、形式ばった式じゃないんじゃよ、楽しい披露宴にしたいだけなんじゃ。祝儀もいらねぇから安心しな。パーティみたいなもんだから気軽に来てな、頼むよ」
マジで結婚する気か…半信半疑でいた僕はようやくその事実を理解した。
式の日取りは7月21日大安吉日。
うちの親には一応説明はした。長年お隣さんを見てきた親はあの歳で結婚することに非常に驚いていた。
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